12/15(日)、今回は定例開催のFactory Art Museum Toyama とは場所を変えて、旧大和百貨店4階 御旅屋セリオにて、高岡市との共催企画SDGsDaysとして、「SDGsはなぜうさんくさいのか?」という攻めたテーマ名として哲学カフェを開催しました。
現地7名の開催となりました。
1.概要
今月は、哲学的視点から批判・擁護・実践の三部構成で議論を行いました。まず第一部では、SDGsに対する違和感や矛盾点を深掘りし、第二部ではそれを擁護する道筋について模索しました。最後に、第三部では「実践」に焦点を当て、具体的な行動案を探ることで議論を締めくくりました。
2. 第一部:批判 - なぜうさんくさいと感じるのか?
SDGsに対する批判的視点から、以下のポイントが議論されました:
- 矛盾
- SDGsの中に含まれる「経済成長」と「環境保全」という相反する目標に対し、参加者は「矛盾した目標を一つの枠組みに押し込めている」と指摘しました。
- レオポルドの土地倫理やヒックルのアニミズムの議論を参照し、自然との共存が前提となる倫理観と現代的な成長志向の間の乖離について深掘りしました。
- 手法
- SDGs達成のための「バックキャスト方式」に対する違和感が共有されました。この方式では未来から現在を見つめる視点が重要とされますが、具体的な行動計画の不透明さや実現可能性への疑念が挙げられました。
- 欺瞞
- グローバル企業によるグリーンウォッシュ(表面的な環境配慮を装う行為)の実例を挙げてケーススタディを行い、参加者の間で「SDGsが実質的な変化をもたらしているのか」という議論が活発化しました。
- 体制
- 国連という組織の構造的な問題についても議論が及び、「一部の大国や企業の利益が優先されているのではないか」という批判が共有されました。
- 動機
- ナッジ理論やゲーム理論的手法を用いた動機付けについて、『サスティナビリティの経済哲学』を参照しつつ、倫理的観点からの疑念が提示されました。「これらの手法が人々の自由意志をどこまで尊重しているのか」が主要な論点となりました。
3. 第二部:擁護 - あえて擁護する道筋はあるのか?
批判を踏まえたうえで、SDGsを擁護するための議論も行われました:
- 多様性
- SDGsがジェンダー平等、生物多様性、ローカルの多様性を重視している点が評価されました。
- 未来の時間軸
- 評価指標の時間軸が長期的になったことが、過去の短期的政策と比較して意義深いと指摘されました。
- 計測性
- SDGsの達成度は問題も多いものの、時系列での比較が可能である点で一定の価値があるとされました。
- 共通の枠組み
- 193か国が合意した国際的な枠組みそのものに大きな意義があるとする意見がありました。
- 日本企業の文化との親和性
- 日本の伝統的な「三方良し」の思想はSDGsの目標と調和しており、さらに未来軸を加えることで「四方良し」に進化し得るという肯定的な見解が示されました。
- 土地倫理やアニミズムの反映
- レオポルドの土地倫理やアニミズム的視点がSDGsの一部指標に取り入れられている点は、新たな可能性を示すものとして評価されました。
4. 第三部:実践 - いかにして実践するのか?
最終部では、各参加者が主体的に取り組める実践案について議論しました:
- 住環境の改善
- 樹脂サッシによる内窓設置など身近な住環境から始める具体例が多く挙げられました。
- 富山県の産業構造からのアプローチ
- アルミ産業が盛んである富山ならではのアルミのリサイクルは、そのリサイクル効率の高さに加えて、地域の特色を活かした持続可能な取り組みとして検討の価値があると提案されました。
- ローカルな試み
- 小規模多機能自治や地元主導の取り組みが、SDGsの理念と親和性を持つ可能性について議論されました。
- 発電をめぐる多様なアプローチの模索
- 核融合発電から非電化工房に至るまで、多様な方法を組み合わせて実践する必要性が指摘されました。
- 主体的な行動の重要性
- 「一人ひとりは微力だが、バタフライエフェクトを起こし得る」という希望が共有され、選挙投票率の向上に似た形で、各自の小さな行動が全体に影響を及ぼす可能性が強調されました。
2024年は選挙イヤーであったこともあり、政治の話題を多く取り入れました。2025年は「私たちは日本人としてどう生きるべきか?」をメインテーマとして、日本と世界の関係性について考えていきます。日本と西洋、日本と東洋、日本と中露・グローバルサウスなど、その哲学的な背景から比較文化論のアプローチで考察していきます。
2025年の1月は、定例開催通りFactory Art Museum Toyamaにて「家族とは何か?―日本人の心に潜むその意味を問い直す」と題して開催します。