【活動報告】第65回哲学カフェ×高岡市TASU「SDGsとは何か?」2023/12/17

12/17(日)、今回は定例開催のFactory Art Museum Toyama とは場所を変えて、旧大和百貨店4階「SHARE LOUNGE 御旅屋セリオ」にて、高岡市との共催企画SDGsDaysとして、「SDGsとは何か?」をテーマとして哲学カフェを開催しました。

当日の会場「SHARE LOUNGE 御旅屋セリオ」

今回はオンライン配信はなしで、雪交じりの悪天候の中、現地に9名の方が集まりました。会場はとても空調が効いていて、SDGsのテーマにミスマッチの感はありましたが、快適な環境で対話を行うことができました。

最初はフリートークから初めて、SDGsについての素朴な実感と意見を聞くことから始めました。やはり、SDGsの偽善性・うさん臭さについての話題が盛り上がりました。

その後、SDGsについてのいわゆる17の目標と169のターゲットをざっくりと見通して、MDGs以来の歴史と、チャクラバルティに見られる人間中心主義の再考を迫る思想的背景に至るまで説明しました。「うさん臭さ」についても、有名なSDGsウオッシュや、パワーポリティックスやESG投資に翻弄されている背景を説明しました。

斎藤幸平氏『人新世の「資本論」』が「SDGsは大衆のアヘンだ!」と喝破したことが有名ですが、その著作の内容についても概説して、かえって資本主義の枠組みの中でSDGsを実装しようとする本質が見えてくるという点を紹介しました。

本日の興味深いかった一つの論点は、SDGsはうさん臭い点は否めないものの、それなりに効力を伴って日本社会に影響を与えている点です。例えば、SDGs思想の要の一つは「ディーセント・ワーク」(尊厳のある労働)ですが、それが現今の労働時間の時短に大きな影響を与えていますし、また、性的虐待への厳しい態度がSDGsにおいてうたわれていますが、それが今年日本で大きく動いたジャニーズ事務所の創業者による少年への性的虐待の告発にも大きく影響を与えている点です。これは間違いなく社会の進化につながっていると言えると思います。「やらない善よりやる偽善」と言われたりしますが、実践を進めるうちに効力が伴ってくるものなのかもしれません。

本日のハイライトは、身体に障碍を持つ方が自らの苦しみを率直に吐露されて、図らずも「誰一人取り残さない」というSDGsのメッセージの真正性について、皆さんが真摯に検討を行った点です。チャクラバルティの『人新世の人間の条件』については、一度哲学カフェで触れましたが、人間中心主義から生命中心主義への移行がテーマの一つになっていました。身体障碍への態度は、まさに生命中心主義の思想の真価を試されて、ファシリテーターである私自身も大変緊張しました。

一つ工夫した点は、SDGsはあまりにも幅の広いテーマで複雑怪奇に込み入った問題点をはらむので、身近な食の問題に絞って対話を行いました。多様な嗜好があるだけでなく、アボカドを食べることをやめたという段階から、肉類一切が食べられなくなったという段階に至るまで主体的な判断で食を選んだ方もあれば、糖尿病の影響で必然的に接触せざるを得なかったという方に至るまで、多様性を認識する一つのきっかけとなりました。

当日のホワイトボード

次回は、SDGsのように幅広く複雑なテーマに直面しては、陰謀論が掲げるような大きな物語に飛びつきたくなる誘惑に駆られますが、その誘惑に上がらうための知恵を探す対話を行います。ずばり「陰謀論とは何か?」と題してオープンマインドな対話を試みます。

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