2014年12月12、13日の二日間にわたり、劇作家の岸井大輔さんをお招きしてハンナ・アーレント著「人間の条件」プロローグの読書会と、九鬼周造の「いきの構造」をヒントに富山の美意識を探る会を行いました。
第1日目は、政治哲学者のハンナ・アーレントが公共や民主主義について論じた「人間の条件」のプロローグをみんなで声に出して読む会を行いました。岸井さんが主催する読書会は、東京、愛知、岡山など各地で行われており、富山では初開催です。
「人間の条件」は、1958年に出版された本で、人間がどんな行動をとるのか?という観点から公共について論じています。
冷戦下での宇宙開発に米ソがしのぎを削っていた時代で科学万能に対する信仰が強かった時代ですが、アーレントはそれに疑念を呈し、科学の限界や、コンピュータの時代の幕開け、環境問題について予言しています。
ハイデガーの弟子であり不倫相手でもあったアーレントの文章は哲学的な文体と文学的な表現が混じっており、なかなかとっつきにくい所もありますが、現代社会のことを考えなおす材料としては良い本です。
政治哲学に関する本を、声に出してみんなで読むというのは希少な機会で、岸井さんの進行に助けられながらよく分からない点や率直な感想などを共有しながら理解を深めていける、有意義な会となりました。
「人間の条件」の読書会、次回も岸井さんを招いて継続したいです。有志での読書会の続きも、大歓迎です。
2日目は九鬼周造の「いきの構造」について学んだあとで、富山という地域に根付いた美意識について皆で語り合う会でした。
岸井さんが参加者の反応を見ながら、程よいタイミングで話題を提供して盛り上げて行く様子は、さながら1つの演劇をみているかのような気分でした。
「かたい」「旅のひと」など、富山での人間関係において重視される、あるいは強く意識される言葉が、一人一人の語りの中から引き出されてきました。今回は時間が足りませんでしたが、富山の美意識がその歴史や風土、慣習などとどのように関係し、またどんな所に現われているのかを探っていくことで、私たちのふるさとへの理解も深まり、未来にどう受け継いでいくかという道筋を見定めるヒントになるかもしれません。